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地域の“看板商品”で観光マーケティングを強化しよう! 

ポスト・コロナ=新時代に向けて地域が一体となってDMOが今準備しておきたいこと

~【2022年度】観光庁 経済対策関係予算からの示唆~

観光庁による補正予算が発表されました

昨年11月に、観光庁による令和3年度経済対策関係予算の概要が発表されました。

https://www.mlit.go.jp/common/001442842.pdf

 

これはコロナ克服・新時代開拓のための経済対策に係る観光庁関係の予算で、「新たなGo To トラベル事業」を含む、5つの事業が掲げられています。コロナ禍以前の観光による経済波及効果は、旅行消費額は29.2兆円、雇用誘発効果は260万人(波及効果を含めた雇用誘発効果:456万人)とされ(いずれも2019年、観光庁観光戦略課観光統計調査室)、観光産業の回復は日本の経済にとって重要な要素ともいえ、今後の観光需要喚起策に期待がかかります。

しかしコロナ禍前後では消費者の価値観の変化や行動変容も多く予測されています。インターネットによる消費行動は若者だけでなく中高年齢層にも定着し始め、スマートフォンは情報収集だけでなくインターネットショッピングでも使用されています。また、SDGsへの意識の高まりを背景に、環境志向も増えてきています。

 

このようなマクロ環境の変化に対して観光ももちろん対応をしていく必要があります。しかし最初から明確な回答はないでしょう。試行錯誤を重ねて新しい市場に対応していく必要があります。先が見通せない不確実性の時代には回答を予測することよりは、むしろ、先手を打って、自ら回答を作っていくことも重要になります。未来を予測する一番いい方法は、それを創っていくことです。

 

その際に、さきにご紹介した観光庁の事業を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

 

例えば、補正予算案の一つに「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出」という事業があります。

「地域経済を支える観光の本格的な復興の実現に向けて、地域の稼げる看板商品の創出を図るため、自然、食、歴史・文化・芸術、生業、交通等の地域ならではの観光資源を活用したコンテンツの造成から販路開拓まで一貫した支援を実施する。」

としています。

「看板商品の創出」と目的と「販路開拓」までの一貫した支援をするとしていますから、地域の資源を活かしてその地域ならではの経験を商品として企画造成し、デジタルを利用して消費者に提示(販売)するための準備に活用できる事業ではないでしょうか。

DMOによる看板商品と観光地マーケティング

地域をプロモーションする際には、地域の利害関係者の公平性を保つため、その露出方法も“公平に”なりがちです。しかしマーケティング戦略は、市場をセグメントし、ターゲットを決め、そのターゲットに最適な商品を最適な価格で、最適な流通、販促策を用いて、市場創造を行っていくことです。けしてすべての地域資源をまんべんなくプロモーションすることではありません。取捨選択することは一見“不公平”に見えるかもしれません。しかし、中長期的な観光地の発展の視点で考えれば、戦略性をもって取り上げる資源を取捨選択し、ターゲットに訴求し、その結果観光客が増えれば地域全体に事業機会が創出されることになります。なぜならば、観光客は一度観光地を訪れれば、他の「いいもの」に出会う機会が生まれるからです。つまり、打ち出していくものを戦略的に決めることが重要です。それが「看板商品の創出」ということになります。



例えば、フランス・パリは、以前から、そして今も、凱旋門、エッフェル塔がアイコンです。パリで開催が予定されているスポーツイベントのプロモーション映像は記憶に新しいところです。また、シンガポールと他の東南アジアの国を思い浮かべたとき、シンガポールは「マーライオン」が即座に出てきますが、他の国はそうでもありません。これはシンガポールの観光ブランディング戦略がそうさせた結果なのです。


もちろん実際には多種多様な観光資源があります。それらをまんべんなく打ち出すのではなく、“看板”となるものを決めており、それを訴求し続けているのです。つまり、地域をプロモーションするときには、この地域にはこれがある、という定番=看板商品があったほうが、消費者には理解がされやすいのです。そしてその看板商品をフックにして地域を訪れた観光客に、他の経験を提示する準備をし多様な選択肢を見つけてもらう。それによってそのデスティネーションにおける顧客経験価値を総合的、包括的に高めていく。


また、それらの商品をデジタルを活用して流通させることにより、その販売データが取得できます。今やインターネットによる流通は、OTAでの販売だけでなく、” D2C”(Direct to Consumer)と呼ばれる、事業者が直接そのウェブサイトで販売する手法も簡単になりました。その結果を分析し、売れる商品は継続して販売し、売れなかった商品はその原因を明らかにして商品や売り方を更新していく。それが、デジタルを活用した観光地マーケティングのアプローチになります。



テクノロジーの発展により、データを取得することや、オンライン販売をすることは非常に簡単になりました。DMOや体験事業者向けのクラウドサービスであるJTB BÓKUNもそのツールの一つです。初期費用はかからず、アカウントは即日で発行することも可能です。つまり今課題とすべきはデータが取れるかどうかではなく、取得したデータをどう活かすのか、データを取得するゴールを明確にしたうえで、必要なデータを定義し、そして取得の後に分析を行うこと、つまりデスティネーション・デジタルマーケティングの実践段階に移ってきているといえるでしょう。

ワークショップ形式によるプロジェクト推進 ~ある地域のDMOの活用事例~

ある地域のDMOの事例をご紹介しましょう。

 

2021年秋に観光庁事業を活用して、DMOのウェブサイトにおいて、地域の事業者が企画する体験商品、約20商品を販売しました。JTB BÓKUNのアカウントをDMO、体験事業者の双方が取得し、それによって、DMOのサイトで体験商品を販売することが可能になります。またDMOが決済代行会社と契約することにより、予約販売時にオンライン決済も可能となります。もちろん販売データはすべて取得可能です。


販売開始までの準備期間は約2か月でした。そこでプロジェクトを発足させ、毎週ワークショップを開催し、最初に事業の目的を確認し、それに沿ってシステムを設定するための議論を行いました。事業のスキームが決まれば、次に地域の参画事業者を募るため説明会を開催し、事業やシステムの概要を伝えました。参画事業者のJTB BÓKUNアカウント取得から販売の設定までは1か月程度でした。


実際に販売開始がされてからも週次でワークショップを続け、販売状況などトレースします。販売状況はJTB BÓKUNのダッシュボードによりリアルタイムで確認が可能です。そして一定期間の事業の終了後、すぐにその結果を集計、分析し、共有しました。体験事業者へのサポートは、JTB BÓKUNがオンラインを中心に電話でも行いました。

事業終了後、即座にデータを集計し分析することが可能です。その結果、参加者が近隣の県からほとんどだったこと、オンライン予約は若い世代だけでなく50代以上にも多く活用されたこと、体験予約のタイミングで一番多かったのは体験の前日、そして、1週間前、3~4日まで、という購買のピークがあったことなどがわかりました。

 

これらの分析によって、次回、コロナ禍において重点的に販促をすべき地域や、体験商材のラインナップの見直し、旅ナカでの販売強化などの必要性などが議論できました。

 

コロナ禍の期間、もちろん訪日インバウンド客は実質ゼロでしたが、今後市場が復活した際には多様な背景を持ったインバウンド客のデータが取れれば、さらに効果的なマーケティングにつながると考えます。また、宿泊施設のウェブサイトでの販売や、体験事業者同士で販売するクロスセルにより旅ナカでのタッチポイントを増やすこと、Google ビジネス プロフィールGoogle マイビジネス)や、Google Things to Doとの連携などによるデジタルのさらなる活用など、次のステップを視野に入れているところです。


徳島県 地域連携DMO一般社団法人そらの郷様の事例はこちら

青森県 地域DMO         一般社団法人ClanPEONY津軽様の事例はこちら


<分析結果の一例>

先行予約日 体験の何日前から予約が入るのかを見ると、体験の前日、3~4日前、1週間前が多いことがわかります。

 

JTB BÓKUNのダッシュボードの一例>

JTB BÓKUNのレポート機能(ダッシュボード)では、リアルタイムで商品別やチャネル別の販売状況が把握できます。

まとめ

以上、観光庁の事業のご紹介と、地域において看板商品を企画し販路を作るまでの、観光のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める事例をご紹介いたしました。国の事業やデジタルツールをうまく活用して地域の持続的な発展につなげていきたいですね。


なお、情報は事前の告知なく変更になることがございます。上記にご案内した情報は必ずご自身でご確認の上、ご自身の責任の上、ご活用ください。

参考文献:

野村総合研究所 第322回NRIメディアフォーラム

生活者1万人アンケート(9回目)にみる日本人の価値観・消費行動の変化―コロナ禍で、日本の生活者はどう変化したか―2021年11月19日

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/report/cc/mediaforum/2021/forum322.pdf?la=ja-JP&hash=396365B469B39B585BCE5A74CD340308B02D63F2

JTB BÓKUNについて


JTB BÓKUNは、グローバル市場に対応した観光協会・DMO・体験事業者向けの予約・在庫管理システムです。


 主な機能:

  • 自社ホームページでの体験商品の販売
  • ユーザー同士での体験商品の相互販売
  • 海外OTA(Viator、KLOOK、GetYourGuideなど)との接続
  • 体験商品の予約・在庫の一元管理(チャネルマネージャー)
  • 販売データおよび顧客データの分析
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