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人気農泊体験ツアーから学ぶ。農泊ビジネスを始めるためのポイント

昨今のコロナ禍において、旅のスタイルや働き方は多様化しています。平林知高氏監修の「ツーリズムの未来2022-2031 特別編集版」によると、今後は自宅以外に長期滞在しながら、仕事も観光もするライフスタイルがトレンドとなり、普及するとも言われております。このような環境下において、近隣への旅行(マイクロツーリズム)やワーケーション、リモートワークの目的地として「農泊」へのニーズが高まっています。


このコラムでは、農林水産省が進める農泊に、地域事業者が取り組む際に必要となる基礎情報と注意点を農林水産省の資料を基に解説します。併せて、成功している事例を挙げ、成功のポイントを考察します。

農泊(農山漁村滞在型旅行)とは?

農泊とは、 旅行者が農山漁村地域に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ民泊のことを指します。農山漁村滞在型旅行とも呼びます。これを、農泊を受け入れる地域事業者の立場から考えると、食・宿泊・体験・景観などの地域資源を観光コンテンツとして最大限活用することで、旅行者を呼び込むということになります。アフターコロナを見据えるとインバウンドを含む国内外の旅行者に向けた基盤づくりが望ましいでしょう。


農泊を推進することで地域の所得向上と活性化を実現して、地域観光を持続可能な産業とし、地域が自立した運営を行うことを目的としています。


農林水産省では、農泊に取り組む地域に対し、地域が一丸となって取り組むための体制整備、地域資源を活用した魅力ある観光コンテンツを磨き上げる取組、古民家や廃校等を活用した滞在施設等の整備への支援を行っていますので、この支援制度を活用してみてはいかがでしょうか。

農泊のメリット

では、農泊を推進することは地域事業者にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つのメリットを紹介いたします。


1つは、さきにも触れた通り、所得の向上を実現できることです。宿泊を提供することで、旅⾏者の地域内での滞在時間を延ばしつつ、滞在中に⾷事や体験など地域資源を活⽤した様々な観光コンテンツを提供して消費を促すことにより、地域が得られる利益を最⼤化します。


2つめは、農泊を中心として都市と農山漁村の共生・対流に繋がることです。

都市と農山漁村の共生・対流とは、都市と農山漁村を行き交う新たなライフスタイルを広め、都市と農山漁村それぞれに住む人々がお互いの地域の魅力を分かち合い、「人、もの、情報」の行き来を活発にする取組です。「農泊」を中心に、農山漁村における定住・半定住等も含む広い概念であり、都市と農山漁村を双方向で行き交う新たなライフスタイルの実現を目指しています。JTBが行った意識調査からも、農山漁村への旅行は一過性の旅行にとどまらず、関係人口に繋がっていくことが分かっています。

農林水産省-農泊を中心とした都市と農山漁村の共生・対流(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/170203.html) より抜粋

農泊の申請手順概要と法律や商標など注意すべき点

農泊には、農林漁家民泊と農林漁家民宿の2種類があります。

ここでは、農泊を始める際に申請を行う手順概要について、農林漁家民泊と農林漁家民宿の2種類に分けて解説します。

農林漁家民泊の申請手順概要

まず、開業を検討している地域の管理団体に問い合わせを行います。管理団体の問い合わせ先一覧は、農林水産省の運営する「農泊ポータルサイト(https://nohaku.net/council/)」に掲載されています。


管理団体の形態は、地域協議会や社団法人、NPOなど地域によって様々で、指針もそれぞれ異なります。例えば、農林漁業の副業という位置づけになるため、本業が農林漁業であり、各種組合等の加入を条件とする指針が定められている場合があります。


次に、指針に沿った体験プログラムを準備します。体験プログラムの内容も、地域の特性を生かしたものとなることから、地域により様々です。旅行者の受入れに関しても管理団体を通して行われ、料金は団体で決められた体験料を収受します。


このように、農林業家民泊の申請手続きや運営方法はその地域や管理団体によって異なりますので、開業を検討しているエリアごとに確認してみましょう。

農林漁家民宿の申請手順概要

まず、開業する農林漁家民宿の経営スタイルやサービス内容などの計画を立て、事前準備を行います。開業にあたり、各種法令の規制緩和の適用を受けるには、農山漁村余暇法に定める農林漁業体験民宿業の条件を満たす必要があります。


次に、事前準備が整ったら、行政の担当窓口に相談し、各種法令に適合するよう、許可申請の手続きを行います。農林漁家民宿に関連する法令には、旅館業法、食品衛生法、都市計画法、建築基準法などが挙げられますが、旅館業の許可申請は保健所に対して、関連法令の手続きについてはそれぞれ担当部署に対して行います。


農林漁家民宿では、民宿運営の規制緩和の適用を受けられるため、初期投資が抑えられるメリットがあります。しかし、規制が緩和されている分、安全面への配慮には十分注意して投資を行うことが重要です。


また、「農泊」は商標ですので、商標使用にあたっては注意が必要です。団体・個人を問わず旅行商品やイベント、お土産品などに「農泊」商標の使用を考えている方々については、農林水産省への申請手続きが必要になりますのでご注意ください。

農泊ポータルサイトや体験型OTAの集客方法の紹介

農泊の申請手続きが完了したら、いよいよ集客を始めることになります。昨今の旅行予約において、デジタルツールの活用は不可欠であり、コロナ禍によりその動きが加速しています。ここでは、集客に活用できるWebサイトを2つご紹介します。


農泊ポータルサイト(
https://nohaku.net

農泊に取り組む地域と農泊を体験したいユーザーをつなぐ情報発信サイトです。


STAY JAPAN(
https://stayjapan.com/experience/for-family-2021

民泊・農泊・貸別荘・コテージ・古民家や、城泊・寺泊(宿坊)など個性的な宿を集めた予約サイトです。


加えて、弊社が提供している体験商品の予約・在庫管理システム「
JTB BÓKUN」を活用して農泊をご販売頂くことも可能です。

WWOOF、グリーンツーリズム、農泊の違い

共に農山漁村地域を目的地とした旅行・体験形態にWWOOF、グリーンツーリズム、そしてここまで紹介してきた農泊があります。これらの違いについて、解説します。


まず、WWOOFとは、World Wide Opportunities on Organic Farmsの頭文字から来ており、有機農場を核とするホストと、そこで手伝いたい・学びたいと思っている人とを繋ぐ有限責任事業組合です。「食事・宿泊場所」を提供する側をホストといい、「力」そしてを「知識・経験」提供する側をウーファーといいます。その関係に、お金のやりとりは一切ありません。現在は、世界60か国以上にWWOOFの活動が広がっています。


次に、グリーンツーリズムとは、自然、文化、人々との交流を楽しむ観光の一形態です。

国民の新たな余暇ニーズへの対応 、農村地域の自然・文化を保全した農村活性化 、都市住民の農林漁業・農村への理解の増進 、外国人旅行者が日本固有の自然及び文化等にふれる機会の提供 という4つの効果をもたらすとされています。


最後に、農泊は、グリーンツーリズムの中でも特に農業、林業、漁業などの体験型宿泊である形態を指します。


金銭のやり取りは発生せずに農山漁村地域と旅行者が交流を行う取り組みがWWOOF、

金銭のやり取りが発生し、自然、文化、人々との交流を広く楽しむ観光の一形態がグリーンツーリズム、そしてそのうち体験型宿泊である形態が農泊です。

事例1.ワーケーション×農泊 蔵王農泊振興協議会(宮城県蔵王町)

蔵王農泊振興協議会が事業実施主体となり、地域のまちづくり、観光物産協会、福祉施設、移住相談室など他業種が参画した事例です。空き別荘15棟を、1棟貸し宿泊施設として民泊に活用しました。無線LANを完備し、ワーケーションに適した環境へと整備しています。


旅行者は長期滞在し、レジャーを楽しみつつ、リモートワークを実施。その結果、令和2年4~8月で340人泊の受け入れに成功しました。コロナ禍であるにもかかわらず、宿泊稼働率はコロナ前である前年同等の8~9割に回復し、農産物直売所の年間売り上げも前年の2倍となりました。


本事例のポイント

コロナ禍でリモートワークが普及し始め、多様化する働き方のニーズと、非接触を推進する概念に合致したことがポイントであるといえます。事業自体は平成30年度~令和元年度にかけて実施していますが、コロナ禍を逆手に、ワーケーションやマイクロツーリズムで持続的な所得向上に貢献しています。実際に近隣からの旅行者(マイクロツーリズム)が増加し、令和2年には宿泊数の約7割を占めました。

事例2. 地域連携DMOとの連携 馬瀬地方自然公園づくり委員会(岐阜県下呂市)

自然や歴史文化と共存しながら持続可能な農村の発展を目指す「馬瀬地方自然公園づくり委員会」を発足させて事業主体となり、宿泊施設や飲食店等と連携し、レンタサイクルツアーや食の体験の事業を展開した事例です。


南飛騨馬瀬川観光協会を窓口として、体験プログラムやエコツアープログラムを販売しており、地域連携DMOである(一社)下呂温泉観光協会と連携して、ネット広告やYouTube、チラシ配布などの誘客活動を実施しています。

本事例のポイント

地域内の幅広い事業者同士が連携して事業を推進したことが成功のポイントであるといえます。例えば、料理研究家と連携し、地域の食材を活用した食事メニューを開発。地元のホテルや飲食店で開発したメニューを販売しています。農泊の醍醐味である地域の観光資源を最大限に生かした、地域宿泊+食(あゆ)+体験(自然体験)の体験型宿泊の受入を行ったことが好評で、近隣からの旅行者(マイクロツーリズム)が増加しました。

まとめ

この記事では農泊の基本的な情報、事例を紹介させていただきました。農山漁村地域の事業者にとって、農泊は観光を持続可能な産業とし、地域が自立した運営を行うことで所得向上に期待することができるでしょう。また、その土地土地で唯一無二の地域の魅力を、日本のみならずアフターコロナに向けて海外の旅行者にも伝える絶好のチャンスです。

この記事を参考に、地域事業者の皆様が農泊に取り組む意義やメリットについて少しでも考える機会となりましたら大変幸いです。最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

参考文献:

農林水産省”「農泊」の推進について”

https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/nouhaku_top.html

 (参照2022-2-4)


Livhub” 農家民泊(農泊)のメリット・デメリットは?始める手順や注意点も”

https://livhub.jp/column/farmers-house-merit-demerit-procedure.html#03

 (参照2022-2-4)


minorasu” 農家民泊とは? 農家へのメリットから注意点、申請方法までを一挙解説!”

https://livhub.jp/column/farmers-house-merit-demerit-procedure.html#03

 (参照2022-2-4)


WWOOF Japan” WWOOFについて”

https://www.wwoofjapan.com/home/index.php?lang=jp

 (参照2022-2-4)


平林 知高,2021” ツーリズムの未来2022-2031 特別編集版”

https://project.nikkeibp.co.jp/mirai/tourism/

 (参照2022-2-4)

JTB BÓKUNについて


JTB BÓKUNは、グローバル市場に対応した観光協会・DMO・体験事業者向けの予約・在庫管理システムです。


 主な機能:

  • 自社ホームページでの体験商品の販売
  • ユーザー同士での体験商品の相互販売
  • 海外OTA(Viator、KLOOK、GetYourGuideなど)との接続
  • 体験商品の予約・在庫の一元管理(チャネルマネージャー)
  • 販売データおよび顧客データの分析
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