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JTB BÓKUNの導入をきっかけに弘前市が進めた有償ガイド育成の取り組みとは?

本コラムは、弘前市が現在取り組んでいる事例(有償ガイド育成)の紹介です。地域の課題を解決するために、有償ガイド育成に着手された背景やプライベートガイド講座の模様を取材してきました。他の地域やDMO・観光協会様においても、観光推進の一つの参考になり得ると考えます。

取材に応じてくれたのは、弘前市、ClanPEONY津軽(地域連携DMO)、そして、インバウンドガイド協会です。弘前市が有償ガイド育成(体験商品造成の強化)の枠組みの構築を担当し、体験商品を販売するのがClanPEONY津軽、そして、インバウンドガイド協会が有償ガイド育成を実行支援するという構成です。

魅力的な旅行商品を旅行者にしっかりと届けるために

ーー有償ガイド育成のきっかけとなった背景にはJTB BÓKUNがあると伺いました。

ClanPEONY津軽・渡邊氏:


そもそも、JTB BÓKUNを導入したきっかけは、地域の体験商品を網羅的に旅行者に示す必要があったからです。弘前市界隈は弘前城や立佞武多の館などいわゆるメジャーな観光スポットはあるものの、まだ活用しきれていない資源も数多く存在しています。そこで、メジャー観光スポットに行く前後の時間で体験できる津軽地域ならではのコンテンツ造成や、リピーターの方から評価頂いている建築や文化的な観光資源などのマネタイズ作業を進めています。また、もともとコンテンツは存在しているものの事業者や自治体ごとにチラシやHPなどによって、情報発信をしていたため、折角魅力的な資源があっても旅行者に届けきれていないと実感することもありました。この課題を解消すべく、まずは、お客様に体験商品を見て貰える基盤を設けること、そして、目に届いて購入できる商品として、まとめて掲載できるようにしなければならないと思っていました。

 

そこで様々なツールを検討した中で、結果として、体験アクティビティ予約管理ツールであるJTB BÓKUNを選択しました。本ツールの機能を活用することで、商品を造成する事業者が複数いる場合でも、BÓKUNシステムを媒介に旅行者にまとめて提示することができます。そして、マネジメントエリアが14市町村に及ぶというスケールメリットを生かしながら様々な媒体を活用して、旅マエ・旅ナカで旅行者に認知して貰える施策を打つことができます。まだまだ実現できていないことがたくさんありますが、旅行者が津軽にお越しいただく様々なシーンにおいて、地域のコンテンツの存在を知って頂けるよう、我々としては、津軽の魅力を余すことなく伝えていきます。

JTB BÓKUNとは

JTB BÓKUNは、グローバル市場に対応した観光協会・DMO・体験事業者向けの予約・在庫管理システムです。

資料ダウンロードはこちらから。


ClanPEONY津軽とは

「Clan PEONY津軽(クランピオニーつがる)」は津軽平野にそびえる岩木山を中心とした津軽圏域14市町村で構成する地域連携DMOです。「観光人材の育成」と「地域の稼ぐ力を引き出す仕組み作り」を目指して活動しています。

体験予約サイト:http://www.tsugarunavi.jp/taiken/

弘前ならではの観光地の課題とは

ーー魅力的な地域コンテンツの収集や展開方が改めて課題だと認識しましたが、改めて、弘前市が置かれている観光上の課題について教えて下さい。

弘前市・吹田氏:


津軽の中心に位置する弘前のイメージは、弘前城とリンゴというイメージかと思います。加えて、昔ながらの建築物が多いのも特徴の一つです。あまり認知されていないのですが、堀江佐吉・前川國男による建築作品など非常にバラエティに富んでいて、まさにこの建築こそが弘前の街並みを形成しています。ただ、現在の社会情勢の中で、歴史的建築物を保存し続けるための資金も十分に捻出するのが難しく、維持し続けることに苦慮しています。コンテンツを目利きし、収集する中で出てきたアイデアの一つが、自ら稼ぐことで、持続的に維持する仕組みを構築することでした。これは、数多くの歴史的建造物を有し、それを観光の強みとしている弘前市として早急に向き合わなければならない課題でした。

 

観光庁の看板商品創出事業に応募した際には、建物を活かしていくというのが主な目的で、加えて、年間の定番商品にすべく取り組むことを目指しました。春は弘前城の桜、夏はねぷたと人を呼び込むことが出来ていますが、春・夏で年間入込客数の8割強を占めるなど、季節によって入込客数に偏りがあることが課題でした。また、旅行者の滞在時間の短さが弘前での課題となっています。いわゆる通過型の観光地と言われています。その中で、建築物も多く、種類も多様にあることから、他の地域との差別化に利用できないかと目論見ました。ただ、観光地側が差別化と考えても、旅行者が普通に観光してもらうだけでは無理があって、それにはまず建物自体の魅力を認知してもらい、現場で分かり易く伝える手段が必要で、そして、最終的に旅行者が理解できるというフローが必要不可欠です。そのため、弘前観光の担い手として、ガイドに注目した訳です。もともと無料のボランティアガイドも弘前にはいましたが、有償ガイドを根付かせる必要があったのです。

弘前城、リンゴの碑

弘前市・村山氏:


補足をしますと、実は弘前自体ではボランティアガイドは、27年の歴史があります。くしくもこの時期は、日本が観光立国を宣言する前にあたりますので、日本の中でも先んじて活動できていたとも言えます。ガイドは勉強熱心な方々ばかりで、自ら主体的に活動を担って頂いていました。我々にとって観光の拠り所となる存在です。ただ、一方で、高齢な方も多く、長時間(2時間以上)のガイド業をこなすには、限界がありました。また、ボランティアガイドの良い点ももちろんありますが、やはり高齢化や善意に頼った観光客の受け入れにも限界を感じていました。観光資源としていくには、有償ガイドを育成していくしかないという結論に至りました。なぜなら、今までのガイドのあり方では、観光産業として成り立ちません。従来のように、たまたま来ていた旅行者をターゲットにするのは、偶然的な要素に頼ることになり、我々が目指している姿ではありません。

 

現在、有償ガイド育成の動きは着々と進んでいます。本年度は観光庁事業の採択を受けていることも事例の一つに挙げられます。実は、前年に文化庁の事業を活用し、建築物の可能性を深く掘り下げる機会を得ていましたので、そこでの検討から、お客様に訴求していく課題を明らかにしました。そこで、ガイドの需要・供給の両面を見据え、商品化まで踏み込んでいかなければならないと位置付けたのです。そのためにも具体的な基盤を必要としていました(結果、1泊2日~2泊3日、4コースのモニターツアー設定に至る)。

地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業

地域経済を支える観光の本格的な復興の実現に向けて、地域の稼げる看板商品の創出を図るため、自然、食、歴史、文化・芸術、生業、交通などの地域ならではの観光資源を活用したコンテンツの造成から販路開拓まで一貫した支援を実施します。

公式ホームページ:https://kanban-soshutsu.com

有償ガイド育成の大切なプロセス

ーー弘前市が一からガイドを構築していくのは大変だと思いますが、どのように進めたのでしょうか。

弘前市・谷淵氏:


我々には知見がありませんので、一緒に進めて頂けるアドバイザーを探していました。その中で、日ごろから付き合いのある旅行会社の方から、会員であったインバウンドガイド協会の紹介を受けました。

インバウンドガイド協会の案内

インバウンドガイド協会は、地域観光の担い手となる外国語ガイドの人材を広く育成し、ガイドのサービス品質向上を推進するため、当協会は設立されました。

公式ホームページ:https://inbound-guide.org/

ーーどのようなステップで取り組んでいったのでしょうか。

弘前市・村山氏:


大きく二つあります。①関係団体との合意形成(意見)、➁ガイド講座を実施(全6回実施)です。まず、一つ目の合意形成ですが、有償ガイド育成の取り組みを進める前段で、弘前市内の複数のボランティアガイド団体と意見交換を行いました(なお、これを実施するにあたって、我々だけでは知見がないことから、インバウンドガイド協会の平塚さんに、弘前までお越しいただきご協力を頂いた点が大きかったです。)。まず重要なのは、各団体が持っている考え方を明らかにすることでした。結果、考え方の相違に対して、それぞれが共通認識を持ってもらうことができました。当然、お互いに完全には分かり合えたとは思っていませんが、少なくとも歩み寄る機会を作ったことは重要でした。彼らにどのような心配事があったかというと、どうしても長年無償でのボランティアガイドをやられてきたので、有償ガイド育成の取り組みに舵が切られることで自分たちが置いてきぼりにされるのではないかという点があったようです。ただ、意見交換によって、ガイド団体間の違いを理解できたので、今後の取り組みにおいて、大きな齟齬が起きないように進められるのではないかと思っています。

 

続いて、2つ目のガイド講座に関してです。広く講座募集を行ったところ、当初想定を上回る32名の方にご参加頂けました。もちろん、ボランティアガイドの方々にも多く受講頂けたのは嬉しかったです。大方の感想として、ボランティアガイドの中にも、有償ガイドに興味がある方も多くいらっしゃいましたので、そういう流れを見ると、やはり①→➁と順をおって進めた効果があったのだと感じます。

弘前市・吹田氏:


ガイドの講座で驚いたのは、ガイドとしての振る舞い、基礎テクニックなどの知識をまず先行して理解させるフローが印象的でした。その上で、実務に進むというステップです。心構えを一から順に講義することで効果が高く、非常に有意義だったと考えます。

フィールドワークと講座の様子

熱い想いが津軽地方の観光を促進する

ーー講座を進める中での弘前市の講習生の印象は如何でしたでしょうか。

インバウンドガイド協会・平塚氏:


まず、ガイド団体の方と話す中で、ガイドの皆さまが弘前の歴史的建築物やそれを含めた街全体への愛着を感じ、街を非常に愛されていることが印象的でした。これが、ガイド業への意欲に繋がっているのだと考えています。この点に関しては、ボランティアとか有償とかの差はないのだと思います。今回は32名の方に受講頂きましたが、年齢が広範囲にわたり、20代の方も複数名いて、若い方も注目していることが嬉しかったです。また、未経験の方も10名ほどいらっしゃって、未経験の方が受講していることにガイドの裾野が広がることを期待しています。先ほど吹田さんがおっしゃられた通り、初めは実務スキルを教える座学がメインであったのですが、後半はフィールドバークによる実践での実務スキルの定着を図ります。全6回にわたる講座で、受講者の方も相互にコミュニケーションを取りながら勉強して頂きました。

 

最後に、受講者からは、ガイドをどこでできるか、いつからできるかなど、すごく前向きなコメントもあり、今後はガイドの活動機会を創出することが必要になります。実際に、この街の観光資源は、建築以外も多様にあって、禅林街のお寺や鍛冶町の飲み屋街など、非常に魅力的なツアーが作れると自負しています。

今回の講座のコースとなった観光地

ーー主催する弘前市として取り組んだ感触は如何でしょうか。

弘前市・村山氏:


今になって思えば、正直、早く有償ガイド講座を実施すれば良かったと思っています。今回の経験を通じて理解したのですが、ガイドの育成には継続的な取り組みが必要で、たった一回の講座開催では何も残せません。今後も意欲ある方の要望に応えていけるよう取り組んでいきます。

弘前市・吹田氏:


そもそもガイド団体間での意見交換の場もなく、平塚さんに来てもらって、大変助かりました。ガイドの人材育成におけるノウハウもなく、本当に困っていましたので。今回の一連の取り組みを通じて、行政・ガイド・双方において、機運醸成を図れました。今後の良いスタートが切れそうです。

弘前市・谷淵氏:


これからが本当の意味でのスタートになります。良い方向に進めなければなりません。

関係者の持続的な取り組みが地域活性化を実現する

ーー最後に皆様の立場から今後の展望をお聞かせ下さい。

弘前市・谷淵氏:


多様な(年齢層やエリア、得意分野が異なるなど)ガイドの育成が必要であると考えます。このことによって、必ずや需要も高まっていくと考えています。

弘前市・村山氏:


ガイドの質の面では、今後、弘前市でのガイド養成講座を、さらにレベルアップしていきたいです。なぜなら、販売を担うClanPEONY津軽の商品に対応出来得る広域ガイドが必要になると考えるからです。また、津軽管内でいえば町村部での過疎化が生じています。エリアごとにガイドを養成していくのは現実的ではありません。

弘前市・吹田氏:


今回、市でガイド講座を実施する中で、受講生の皆さんがガイド及びガイド業に対して強い想いがあることを実感しました。この熱い想いを受けて、今度は我々が継続的に活躍できる場を提供してくことが求められていると感じました。個人的にはその想いに応えたいのと、ガイドの中でも有償・無償それぞれのガイドが共生していける場が必要になると考えています。

インバウンドガイド協会・平塚氏:


さきほどの谷淵さんがおっしゃった「多様なガイド」について補足しますと、国内外の旅行者や案内する分野、年齢層など、多様な旅行者層に合わせたガイドを地域で育てていく必要があります。現状では弘前におけるガイドの数がまだ少ないのですが、今後モデルになるような事例を作っていければと考えています。そのためには、育成したガイドの活躍の場をしっかりと作っていく必要があり、育成と販売を一気通貫させた取り組みを進めなければなりません。

ClanPEONY・渡邊氏:


DMOとしては、弘前をゲートウェイとして津軽エリアに人を呼び込むことを目標に掲げています。コンテンツ、つまり選択肢の充実を図ることで弘前を中心に津軽エリアでの滞在時間を伸ばすことで地域消費額を増やすことを目指しています。

 

また、我々は地域の現状を分析して自治体・連携事業者とともに津軽エリアの観光の方向性を見出すことも求められています。販売の実績を積みあげ、電話予約等では実現できなかった旅行者の行動データの反映を行うことで、次なる展開の実現に繋げます。海外渡航が緩和されるタイミングではインバウンド向けにも商品販売していくことも狙っています。

最後に、今回は、有償ガイド育成の枠組みを提供した弘前市、ガイドツアーの販売を担うDMO、そして、ガイドツアーを支援するインバウンドガイド協会と、3者の立場から話を伺うことができました。皆様の熱のこもった話を伺う中で、弘前から観光活性化のガイドツアーの成功事例が、登場してくるような気がしてなりません。

JTB BÓKUNについて


JTB BÓKUNは、グローバル市場に対応した観光協会・DMO・体験事業者向けの予約・在庫管理システムです。


 主な機能:

  • 自社ホームページでの体験商品の販売
  • ユーザー同士での体験商品の相互販売
  • 海外OTA(Viator、KLOOK、GetYourGuideなど)との接続
  • 体験商品の予約・在庫の一元管理(チャネルマネージャー)
  • 販売データおよび顧客データの分析
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