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観光事業も活用したい接種証明書(ワクチンパスポート)の現状と事例

※この記事は2021年12月18日に書かれました。

記載の情報は予告なく変更になることがありますので、情報を活用される際には必ずご自身でご確認ください。

2021年9月末をもって27都道府県に発出されていた緊急事態宣言・まん延防止等重点措置がすべて解除され、飲食店やイベントの制限緩和が始まりました。また、2021年11月には国内人口の75%余りが2回目の接種を終えたことを政府が発表。行動制限を段階的に緩和しつつ、本格的に社会経済活動再開へ舵を切り始めたといえます。


接種希望者がワクチンを打ち終えた時点で、接種済を条件に入場制限を緩和したり、ポイントや割引などのインセンティブを付与して消費を促進するといった施策が可能なフェーズに入ります。接種証明書(ワクチンパスポート)の本格活用開始に向けて、方向性や活用事例を解説します。

接種証明書(ワクチンパスポート)とは

「接種証明書(ワクチンパスポート)」という言葉は、少し前までは海外渡航用の接種証明書を指していることがほとんどでした。最近では「ワクチン接種済を証明する手段」全体を指して使うことが多いようです。その背景には、自治体や民間が実施する接種証明書を用いた施策の呼称に「ワクチンパスポート」を使っていることが挙げられるでしょう。


現在、日本の公的機関で発行される接種済の証明書の書式には以下のものがありますが、これらの証明書を二次利用して接種履歴などを記録するアプリやサービスも含め「ワクチンパスポート」と呼ばれています。


<接種証明の種類>

・予防接種済証(臨時)

・接種記録書

・接種済証明書

・海外渡航用接種証明書


なお、これらはすべて紙で発行されていましたが、12月20日よりデジタル版の接種証明書の発行が開始される見込みです(2021年12月6日 岸田文雄首相の所信表明演説より)。

予防接種済証(臨時)

自治体が発行するクーポン(接種券)の右側が接種済証になっています。接種会場でクーポンを提示すると、接種日・会場名・ワクチン情報が記載されます。

接種記録書

医療従事者や職域接種など、自治体発行の接種券を使用せずワクチン接種を受けた場合に交付されるものです。自治体の予防接種済証と同様に接種の記録として使用できます。

接種済証明書

予防接種済証(臨時)を紛失した場合や、接種記録書を持つ人で自治体発行の証明書が必要な場合に申請して交付を受けるものです。

海外渡航用接種証明書

日本から海外へ渡航や、日本への入国・帰国の際に、防疫措置の免除や緩和を受けるための証明書です。交付を希望する場合は接種券を発行した自治体に申請します。

あくまで防疫措置の免除・緩和を受けるためのものであるため、そもそも渡航予定がない場合には交付を受けることができません(2021年12月現在)。

接種証明書(ワクチンパスポート)活用のニーズ

ワクチンパスポートの早期活用を求める経団連の提言(2021年6月24日)に示されている活用のニーズには、下記4つが挙げられています。(要約)


1.割引・特典の付与

2.国内移動、ツアーでの参加制限・移動制限の緩和

3.イベント会場、施設での入場制限・要件の緩和

4.介護施設や医療施設の面会、出社などの制限緩和

接種証明書(ワクチンパスポート)活用の注意点

接種証明書の提示で入場や移動の制限緩和が適用されることにより、心理的な安心感が生まれ消費の喚起や経済活動の活性化につながるメリットもあります。一方で、ワクチン接種済か否か、ということだけが安心安全の判断基準にならないようバランスの良い運用が必要です。

基本的な感染予防を怠らない

ワクチンは感染を完全に防ぐものではありません。接種済でも感染が終息するまでは、公共の場でのマスク着用やアルコール消毒、検温など基本的な感染対策は続ける必要があります。

非接種を理由とした不利益や偏見が生じない配慮を

ワクチンの接種は個人の意思によるものです。また、アレルギーや疾患などの理由で接種ができない人もいます。ワクチン接種を受けていない人が不当な扱いを受けることがないよう、十分に配慮する必要があります。

接種証明書(ワクチンパスポート)を利用した取り組み例

国内で接種証明書を用いた独自のサービスを展開している自治体の取り組み例を紹介します。

あんしん島旅プレミアムパスポート(石垣市)

石垣市は、離島の医療体制を守るため、来島者に検査やワクチン接種を促す施策をいち早く開始しました。

2021年7月1日に開始した「あんしん島旅プレミアムパスポート制度」は、出発前の検査の陰性証明またはワクチン2回接種済の証明を空港・市内の発行所で提示するとパスポートが発行され、島内の協力店利用時に割引サービスなどを受けられるサービスです。

また、9月28日からは市民向け「ワクチンパスポート」が運用開始。こちらはデジタル証明書で、市民がスマートフォンの専用ページから接種券番号などを入力すると、ワクチン接種情報が表示され飲食店などで特典を受けられます。非接種者に対しては、陰性証明で代替することが可能となっています。

さっぽろPASS-CODE(札幌市ほか)

札幌市と関係11市町村(さっぽろ連携中枢都市圏)では、2021年12月6日より、「さっぽろPASS-CODE」の試験的事業が始まりました。

「PASS-CODE」は、凸版印刷が開発した感染症情報管理アプリ。新型コロナウイルスワクチンの接種履歴や、抗原検査・PCR検査・抗体検査の結果などの情報を一元管理することができます。

利用者は事前にユーザー情報・顔写真・接種記録を登録しておき、対象施設の利用時に現地のQRコードを読み取ることで接種履歴を表示し、特典を受ける仕組み。この時、同時に施設の利用ログを記録し、クラスターなどが発生した際には迅速に連絡を取ることが可能になります。施設の利用促進と、感染発生時の利用者管理を同時に実現することができ、ウィズ/アフターコロナの経済活動を支える取り組みといえます。


※さっぽろ連携中枢都市圏:札幌市、小樽市、岩見沢市、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村、南幌町及び長沼町の8市3町1村

まとめ

長い自粛の後に経済を回復させるには、行動制限を緩和しキャパシティを拡大することと、消費を喚起すること(特典の付与や安心感の提供)を同時に進めていく必要があります。感染拡大を防止しつつ社会経済活動を活性化させていく中で、接種証明書(ワクチンパスポート)活用の動きに注目です。

参考文献:

経団連."ワクチン接種記録(ワクチンパスポート)の早期活用を求める".2021-6-24.

https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/058_honbun.html (参照2021-12-7)


石垣市"石垣島あんしん島旅プレミアムパスポート"特設サイト

https://ishigaki-safetrip.com/ (参照2021-12-7)


札幌市"「さっぽろPASS-CODE事業(試行)」について".2021-12-7

https://www.city.sapporo.jp/kikaku/ictplan/sapporo-pass-code.html (参照2021-12-7)

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