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【2022年度】観光庁の予算要求から見える観光業のトレンド

ワクチンの摂取やニューノーマルの行動変化が進んだこともあり、新型コロナの感染者数は着実に低下し、Go to事業の再開など国内だけでなく、インバウンドの人流が戻ることなども期待されています。


そこで観光業の2022年の正常化に向けた観光庁の概算要求から2022年の観光産業のトレンドなどを予測します。

令和4年度(2022年度)観光庁予算概算要求の概要

観光庁は、前年度予算比3.3%増の425億3500万円の要求を行いました。一般会計は前年度予算額の148億900万円より約20%増の177億3500万円、東日本大震災からの復興(復興枠)は2020年の3億円から8億円へ増やしています。


新規の予算要求は、長期滞在や第二の故郷などより多様化するニーズを踏まえたポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業(4.5億円)、持続可能な観光推進モデル事業(4.5億円)、東北復興枠でのブルーツーリズム事業(3億円)の3項目です。


観光地・観光産業の存続に万全を期しつつ、ポストコロナを見据え、地域経済を支える観光の本格的な復興の実現を図ることが必要であり、「自然、食、歴史、文化・芸術、生業」等の地域ならではの観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出に向けた取組や、観光地の中核となる宿泊施設の改修その他の観光地の再生や観光サービスの高付加価値化を地域一体となって面的に実施する取組に対して重点的・集中的に支援するものです。


予算概算要求の中身について、大きく5項目を詳しく見ていきましょう。

新型コロナ対策

新型コロナウイルス感染症の拡大以降、国内外の観光需要は大幅に減少し、観光産業は深刻な影響を受けており、雇用の維持と事業の継続に全力を尽くすとともに、感染拡大防止対策の徹底等への支援に取り組んでいます。


今回の予算概算要求では、金額を明示せず項目だけを記載する事項要求として、新型コロナウイルス感染症への対応を要求しています。必要な施策については、今後の感染状況や観光需要の動向等も踏まえつつ、予算編成の過程で検討します。

観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着(22億2600万円、前年度比1.30倍)

この項目の最大の特徴は「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」に7億円を要求したことです。前年度の1億円から大きく増加(前年度比6.97倍)となっています。


宿泊業を地域の観光産業・旅行消費の核となる業種として位置づけ、新たなビジネス手法を導入し、宿泊施設を中心として地域全体に波及する付加価値を生み出す取組を支援します。


具体的には、2つの観点(1. 複数業種等の連携による新規サービス“サブカル・体験型施設など”の導入、2. 地域に波及する生産性向上“バックオフィス部門などのDX化などに係る技術支援”、高付加価値化“食の魅力向上”)で、新たなビジネス手法を導入する取組を、専門家の派遣などを通じて、コンセプト作り・システム開発等を支援します。また、新型コロナ感染症の拡大が続く中でも、収益を生み出している事業者等の優良事例の発掘・調査・横展開等もあわせて実施します。

国内外の旅行者をひきつける滞在コンテンツの造成(22億1500万円、前年度比1.42倍)

今回の予算要求の中で前年度倍率が最も高く、今後成長を期待されている分野です。


最大特徴は、「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」が新規項目として4億5000万円計上されました。新たな市場やニーズの開拓に取り組もうとする地域について、誘客のテーマ(例:自然、農業・林業・漁業、健康、安全・安心な食、アート、リゾート、スポーツなど)やターゲットの明確化、高付加価値なコンテンツ形成のための仕掛けづくりを支援します。


併せて、持続可能な観光地経営の実現を図るため、将来にわたって世界中からの旅行者をひきつけ、地域はもとより日本のレガシーとなる新たなコンテンツの形成について支援します。


また、「DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」は2020年予算8億円から2億円増額の10億円(前年度比1.25倍)を要求しました。


ポストコロナを見据え、旅行者の体験価値向上、消費機会の拡大、来訪意欲増進と顧客定着等を図るため、観光関係のベンチャー企業の技術開発が進められている状況にも鑑み、デジタル技術と観光資源の融合等により新しい観光コンテンツを創出するなど、観光サービスの変革と観光需要の創出を目指した取組を進めます。



【取組のイメージ】

(1)旅行者の体験価値向上を図る取組

XRや5G等のデジタル技術と、文化・自然等の既存の観光資源やバス・鉄道等の移動手段を掛け合わせた新たな観光コンテンツの造成を支援します。

(2)観光地経営の改善につながる取組

人流・購買等のリアルタイムデータや予約・経路検索等の各種データを活用し、観光地における消費機会の拡大につながる取組を推進します。

(3)オンラインを活用した来訪意欲増進と顧客定着につながる取組

動画配信サービスだけでなく、バーチャル空間等を活用し、新規顧客向けの来訪意欲を増進するようなコンテンツ造成を図るともに、既に来訪した顧客のリピーター化につながるような仕組みの構築等の取組を推進。旅行者の体験価値向上、消費機会の拡大、来訪意欲増進と顧客定着等を目指します。


今後観光地経営を推進していく中で、デジタルの活用は欠かせないものとなりつつあることが一目瞭然です。

受入環境整備やインバウンドの段階的復活 (126億3000万円、前年度比1.15倍)

ワクチン接種の進展等により、欧米を中心に国際往来を再開する動きもあり、今後段階的な国際観光の再開が見込まれます。コロナ禍において旅行者の需要にも変化が生じているものの、自然・気候・文化・食に代表される訪日観光の魅力は変わらず、訪日需要は引き続き高いため、今回の予算要求の中で最も予算額が高いです。ポストコロナを見据え、今のうちに必ず準備しておくべき項目だと言えるでしょう。


中でも、「戦略的な訪日プロモーションの実施」として84億3000万円が計上され、「インバウンドの早期回復」と「旅行消費額増加と地方部への誘客」を軸に、2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円等の目標達成を目指すことが明記されました。以下5つのテーマ別プロモーションの強化が図られています。


1. リピーター層に向けた再訪日意欲を喚起するプロモーションの実施

2. コロナによる需要の変化等を踏まえたプロモーションの強化

3. 国別戦略に基づく市場別プロモーションの徹底

4. 地域の観光コンテンツの発信強化

5. デジタルマーケティングの強化


また、「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」には、34億8000万円(前年度比1.03倍)の要求という上記に次ぐ二番目に高い予算額であり注力すべき事項であると言えます。


観光地、宿泊施設、公共交通機関の各場面において、訪日外国人旅行者がストレスフリー・快適に旅行を満喫できる環境及び災害など非常時においても安全・安心な旅行環境の整備を図るため、多言語での観光情報提供機能の強化、無料Wi-Fiサービスの整備、キャッシュレス決済の普及、バリアフリー化の推進、感染症対策の充実、非常時における多言語対応の強化等に関する取組を支援します。


そして世界的に高まるサステナブルツーリズム(持続可能な観光)の推進モデル形成と、その取組の全国展開などに向けた持続可能な観光推進モデル事業には4億5000万円が新規計上されました。単年度計画に終わらず、中長期的に持続的な観光推進をしていく必要があります。


東日本大震災からの復興(8億円、前年度比2.67倍)

誘客を図る新規事業として、ブルーツーリズム推進支援事業3億円を新たに要求しました。ALPS処理水の海洋放出から起きた風評被害対策として、海水浴場の受入環境整備、ブルーフラッグ認証の取得への支援など、海の魅力を発信していきます。


また、福島県において、観光復興を促進するため、同県が福島県観光関連復興事業実施計画に基づいて実施する1. 滞在コンテンツの充実・強化、2. 受入環境の整備、3. プロモーションの強化、4. 観光復興促進のための調査、を支援し国内外から福島県への誘客を図ります。(5億円、前年度比1.67倍)

まとめ

以上を振り返ると、2022年度の海外旅行再開は夢ではありません。政府は近場のアジアから段階的な出入国制限の解除を進め、観光産業の回復を目指す意向です。コロナ前と同水準まで回復する時期については2024年以降と見込まれますが、今のうちに「訪日インバウンドへの受入環境整備」「DX推進による体験価値向上」に取り組むべきだと言えます。

観光庁. “令和4年度観光庁関係予算概算要求概要“. 国土交通省. 2021-08-26.

https://www.mlit.go.jp/common/001420093.pdf,(2021-11-12)


インバウンドコラム. “観光庁2022年度の予算要求を解説、サステナブルやDX推進“. やまとごころ.jp. 2021-09-02.
https://www.yamatogokoro.jp/column/kaisetsu/44018/,(2021-11-12)

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