Instagramは、写真や動画を通じて、リアルな消費者の姿を見ることができるSNSとして、Z世代、ミレニアム世代にとっては欠くことのできない情報収集ツールとなっています。観光事業者が今日からできる利用方法や参考になる事例を交えつつ解説します。
Instagram for Businessとは、企業のビジネス利用に特化したツールです。Instagramのアカウントには個人のアカウントのほかに、「ビジネスアカウント」があり、これを運用することで「ビジネスプロフィールの公開」「投稿やフォロワーの分析」「広告の掲載・宣伝」といったビジネスに役立つ機能を無料で利用可能となります。
サービスや商品の認知拡大などに効果が期待され、2500万社以上(2017年12月時点*1) の国内企業がWebマーケティングに活用しています。
Instagramユーザーは利用者が急増し、日本では人口の1/4にあたる3300万人(2019年3月時点*2)もの人が利用しています。 特にコロナ禍においては、おうち時間が増えSNS利用がますます盛んになっていることから、企業にとっては顧客を掴むチャンスということで注目されています。
最大のメリットは、特に審査や条件もなく誰でも無料で使えることでしょう。低コストで運用が可能な上、ビジネスで役立つ様々なツールも無料で利用することができます。
また、文字中心のTwitterやFacebook、LINEなどと異なり、訴求力が高い写真や動画で、写真や動画で分かりやすく魅力を伝えられます。
さらに「ストーリーズ」という動画を利用すれば、音や動きとともに観光地のリアルな体験も伝えられ、観光地のアピールを効果的に行えます。
Instagramは10代〜20代といった若年層が利用している割合が高いSNSです。彼らはこれからの消費を担う世代です。積極的に投稿する傾向があり、多くの観光客を呼ぶことができる可能性が高く、広告宣伝の費用対効果が高いと言えるでしょう。
運用時に考慮すべき点としては「運用する人的リソース」「炎上のリスク」の2つが挙げられます。
写真の準備やコメントへの返信など、効果的に運用していくためには時間や手間などが必要となります。また、TwitterやFacebookと同様、ネガティブな投稿など誤った使い方をすれば炎上することもあります。
初めは手探り状態かもしれませんが、日々の投稿から「いいね」や「コメント」の数をチェックすることで反応の良悪も掴めてきます。正しい使い方を従業員と共有しながら継続して運用していくことが必要です。
Instagram for Businessの始め方はとても簡単で、次の3ステップでスタートすることができます。
1. PCまたはスマホアプリから、Instagramの新規アカウントの登録をする
2. アカウントを作成したら、設定画面からアカウントを「ビジネス」に切り替える
3. ビジネス情報やプロフィールなど各項目の設定を行う
まだアカウントをお持ちでない場合は登録をして、お店やサービスの紹介をスタートさせましょう。
Instagramをビジネスで使う際、ただ闇雲に投稿を行っても効果は出ません。最大限に生かすためには、戦略を立てる必要があります。
まず、Instagramを使う目的をはっきりさせ、ターゲットを決めます。
そして「アカウントの見た目はどんな雰囲気が好まれるか」「役に立つ情報か」「行ってみたい・食べてみたい、など好奇心をそそるか」などを意識して、ターゲットに刺さる「世界観」を決めていきます。
特に重要なのは、使用する素材の雰囲気に統一感を持たせることです。自社の雰囲気や強みと合わせて設定しましょう。
フォロワーを増やすためには、適当な内容や無関係な投稿は避け、コンセプトに沿った内容を一貫して、定期的に投稿することが重要です。
フォロワー数の多い会社は2〜3日に1回、投稿しています。認知度だけでなく従業員のモチベーションアップにもつながります。
またフォロワー数が多い企業のアカウントの特徴は、コンセプトがはっきりしていて、ファンの心を掴む独特な世界観を感じることができます。
音羽山 清水寺(@feel_kiyomizudera) 清水寺の四季や仏像、僧侶の修行風景など、美しさや荘厳さを感じられる写真が世界中からのファンを増やしています。
ユーザーはハッシュタグを使ってInstagramの投稿を瞬時に検索できたり、趣味・関心の似たユーザー同士で話題を共有したりすることができます。
タグは30個までつけることができ、フォロワー数が多いアカウントは10個以上つけている傾向があります。
検索で有効的にするために、投稿件数の多いハッシュタグと、投稿件数の少ないハッシュタグ(会社に関連したものや投稿内容がわかるものなど)を組み合わせましょう。
例として、先に挙げた清水寺では、「#2021#清水寺#京都#護摩供…」のように約30のハッシュタグをつけています。
Instagramユーザーが旅行先やカフェなど検索する際によく参考にするのが、エリアに特化した投稿です。「#地域名+温泉」のように会社のある地域と一緒に関連する言葉をつけて投稿するとその地域でのアクティビティを検索する人の目に留まります。
InstagramではDMなどを使って企業と消費者がコミュニケーションを取ることができます。またユーザーとの距離を近づけるために、投稿してくれたら「いいね」をつける、ストーリーズで質問を募集する、キャンペーンを実施するといったことも可能です。
大きなInstagramの枠に顔をはめた写真の投稿をご覧になったことがありますか。パネルはお店や観光地に用意され、キャンペーンや記念撮影のために使われています。
日本の観光地にある「顔ハメ看板」のInstagram版と考えるとイメージしやすいかと思います。
Board Frameは、設置者が具体的な店舗名、サービス名、地名などのハッシュタグを明記しています。統一したハッシュタグでの投稿を促すことにより、露出が徐々に増える好循環が望めます。
※Instagram Board Frameの例
Board Frame以外にも店舗内のディスプレイやツアー内での絶景ポイントを意図的に作って上げることで同じような効果が望めます。その際は必ず投稿する際に利用して欲しいハッシュタグも記載をすることが大切です。
特に海外からの観光客にはこのような演出された撮影スポットは大変な人気があります。いわゆる「インスタ映え」スポットの設置は、訪日インバウンド集客には必須の施策となっています。忘れがちですが、日本語だけでなく、アルファベットのハッシュタグも併記するように注意してください。
素材は発泡スチロールやプラスチック、また業者が作ったものから手作り感あるものまで様々なものがあります。
通販サイトを利用する場合は約6,000円から、お店の名前やハッシュタグをつけたオリジナルのパネルが購入できます。
また、手作りの場合は100均などの材料を使っても2,000円くらいから作れます。
タイのパタヤにある「Good Old Sea, Beach Cafe」(https://www.instagram.com/goodoldseabeachcafe/)は、西海岸風のカフェです。カフェの外ではスケードボードやマリンスポーツなどのアクティビティが楽しめます。コロナ禍でも多くのローカル(タイ人)の観光客で満席になるほど賑わっています。
※意図的に撮影スポットを設置し、店名も自然に併記することで「スケードボード」「パタヤ」「店名」などのハッシュタグで多くの写真が撮影されている
Instagramキャンペーンは、顧客を増やす手段として様々な企業や自治体などが行っています。あらかじめ用意されたハッシュタグをつけて画像を投稿する「ハッシュタグキャンペーン」や「フォロー」と「いいね!」を参加条件にするキャンペーンなどがあり、当選者にはプレゼントなどが贈られるものです。
コロナ禍で外出が制限されている中でも、旅行・観光情報は注目されており、この間であってもファンを獲得できるという点がメリットです。
JTBが行った調査*3 では、「コロナ禍で考え方に変化があった」人のうち、「国内旅行したいという意識が高まった」と回答した人は全体の第2位(26.7%)でした。
また、株式会社パスチャーの調査*4では、2021年5月のフォロワー数の成長率の高いアカウントの共通点は、国内旅行に関する情報を発信しているアカウントが多い傾向がありました。
高知県では2019年7月以降定期的にTwitterでキャンペーンを始め、Instagramでも投稿へのコメント、写真の投稿で参加できるキャンペーンを開催しました。Instagramのフォロワーは増加し、2.7万人となっています。(2021年9月時点*5)
また、フォロワーの約3分の1が高知県を訪れ、さらにそのうち約80%はキャンペーンがきっかけでした。SNSキャンペーンはアカウントフォローの大きな動機につながっています。 *6
大きな投資を必要とせずに国内外の観光客を集客できるInstagramの利用をぜひ検討してみてください。
出典
*1 日本経済新聞. “ンスタグラム、プラットフォーム上のビジネスが2500万社を超えたことを発表”. 2017-12-01.
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP464894_R01C17A2000000/, (参照2021-09-16)
*2 Facebook. “Instagramの国内月間アクティブアカウント数が3300万を突破”. 2019-06-07. https://about.fb.com/ja/news/2019/06/japan_maaupdate-2/, (参照2021-09-16)
*3 株式会社 JTB. “コロナ禍の生活におけるインターネットやSNSからの“情報”に対する意識と旅行”. 2021-04-09. https://press.jtbcorp.jp/jp/2021/04/sns.html, (参照2021-09-16)
*4 株式会社パスチャー. “旅行業界アカウントの平均フォロワー数は5.3万人、成長率は103.4%。6月度Instagram最新動向調査レポートを公開”. PR Times. 2021-06-08. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000153.000026329.html, (参照2021-09-16)
*5 高知観光公式アカウント. Twitter https://twitter.com/naturallykochi (参照2021-09-16)
*6 株式会社コムニコ. “フォロワーの3割が観光へ訪れた!推定経済効果6.5億円*高知県観光のSNS運用成果”. 2020-05-19. https://www.comnico.jp/we-love-social/kochi-survey, (参照2021-09-16)
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