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【事例】県民割とは?Go to 事業との違いと比較

更新日:2022.09.21

「Go to トラベル」の停止を受け、その代替として地域を絞った観光振興策である県民割(地域観光事業支援)が、観光事業者に注目されています。


しかし、これらの事業は、都道府県ごとに実施されていることから、まん延防止等重点措置のステージ判断により、その実施も流動的で観光事業者には分かりづらい状況となっています。 


本稿では、観光事業者がその申請方法や地域における実施内容を確認できるよう、サポートすることを目的としています。

県民割(地域観光事業支援)に関する基本情報

県民割(地域観光事業支援)とは?

県民割とは、2021年3月26日付、観光庁より発表された観光事業者を支援する事業です。


概要は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、旅行需要が落ち込んでいる中、地域的な感染の拡がりを抑制しつつ、ステージⅡ相当以下と判断した都道府県において、当該都道府県が実施する旅行商品や宿泊サービスに対する割引及び地域限定で旅行期間中に使用可能なクーポン券等の付与のために必要な費用を支援する事業です。


改めてポイントは、次の3点です


以上、国が支援できる上限や制限はありますが、支援内容の制度設計は都道府県に一任されています。そのため、割引率は自治体が独自設定できる都合上、各都道府県のページにてそれぞれ支援内容(実施要綱など)が掲載されています。


なお、旅行期間については、現時点(2022年8月25日の公表時点)では2022年9月30日までの旅行(2022年10月1日チェックアウト分)が対象です。

Go to トラベルとの違いは?

Go To トラベル事業は、多種多様な旅行・宿泊商品の割引と、旅行先の土産物店、飲食店、観光施設、交通機関などで幅広く使用できる地域共通クーポンの発行により、感染拡大により失われた観光客の流れを地域に取り戻し、観光地全体の消費を促すことで、地域における経済の好循環を創出しようとする事業です。


2020年7月開始の第一弾では、旅行代金のみの割引でしたが、2020年10月からの第二弾では、旅行代金割引と地域共通クーポンが付与されるようになりました。具体的には、対象への宿泊を伴う、または日帰りの国内旅行の代金総額の1/2相当額を国が支援する事業です。給付額の内、70%は旅行代金の割引に、30%は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与されます。


県民割との違いは大きく4点です。


・旅行の対象(Go to トラベル:旅行対象の制限なし、県民割:居住地と同一県内の旅行のみ対象【ただし、現在(2022年9月15日時点)では近隣県民も対象としている地域がございます】)

・支援内容の制度設計(Go to トラベル:国、県民割:各都道府県)

・利用回数(Go toトラベル:制限なし、県民割:各都道府県がそれぞれ設定)

・国の支援金額(Go to トラベル:1人1泊あたり上限20千円(日帰りは1人あたり上限10千円)、県民割:1人1泊あたり上限5千円) 

県民割(地域観光事業者支援)のメリット

では、県民割は観光事業者にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここではまず2つのメリットを紹介いたします。


1つは、収益の安定化を図れる点です。旅行需要が冷え込んでいる中、行政が主導する販売促進(県民割)によって、旅行客を掴むチャンスが得られます。一時的な収益の安定化を図るだけでなく、今まで旅行から遠のいていた旅行者、特に地元や近隣住民を固定客にすることができれば、将来にわたっての収益の変動リスクを最小限に抑え、事業を継続しやすくなります。


もう1つは、旅行者や従業員のウイルス感染リスクが軽減できる点です。県民割は、感染防止対策を徹底した宿泊旅行や日帰り旅行に助成を行うことを目的としています。そのため、本事業に参画することは、業界団体等のガイドラインに従っていることを一般的に示し、感染防止対策を徹底している証明になります。また、旅行者には感染防止に向けたマナー啓発等のチラシの配布等をするため、旅行者が感染症を持ち込む可能性を下げます。さらに、旅行者だけでなく、従業員がウイルスに感染するリスクを下げることから、万が一自社施設でウイルスに感染する事態になっても、他の地域への影響を下げることにも繋がります。


事業スキームの説明

事業スキーム(宿泊・旅行券を使った代金前払い)のイメージは次の通りです。こちらは、あくまで一つの事例であり、必ずしも以下の仕組みを各都道府県が利用しているとは限りません。

県民割(地域観光事業支援)のデメリット(気をつけるべき点)

ここまで県民割の概要や支援内容、メリットを説明してきました。しかし、制度設計が都道府県に一任されているがゆえに、加盟申請やその要件において、注意すべき点も存在します。各都道府県における実施要綱をしっかりと読み込み、その内容に準じて対応する必要があります。

加盟申請とその要件

ここまで県民割の概要や支援内容、メリットを説明してきました。しかし、制度設計が都道府県に一任されているがゆえに、加盟申請やその要件において、注意すべき点も存在します。各都道府県における実施要綱をしっかりと読み込み、その内容に準じて対応する必要があります。


1.事前登録

各都道府県での実施要項などを把握したうえで、対象事業者登録申込書及び必要書類を提出し、登録しなければなりません。


2.観光促進事業の告知

各都道府県によっては、事業の実施にあたっては、対象となる商品の告知については事業の対象旅行であることを表記・告知する必要があります。


3.事業者種別による区分割当通知と割引販売

続いて、それぞれの事業者区分ごとに、送客実績や客室数の規模、あるいは販売希望金額などに基づく審査を受け、支援の割当通知を受けます。登録された事業者は、対象商品について、助成金を割り引いた商品とするとともに、事業者ごとに割り当てられた泊数及び人数の範囲内で商品を販売しなくてはなりません。



4.精算

最後に、実績報告書の提出し、助成金の交付申請を行います。その後、助成金交付額の決定及び支払を受けますが、精算書類等は所定の期間にわたって保管することが義務付けられています。


前提となる登録-精算までの流れは以上の通りです。続いて、以下では、長野県民割「県民支えあい 信州割SPECIAL」を参考に、地域限定クーポン及び気を付けるべき点についてご案内します。

地域限定クーポン

地域限定クーポンの特徴として、付与される金額、期間、使用できる対象施設があげられます。


宿泊割引キャンペーン利用者は、1人1泊あたり2,000円分の観光クーポンが付与されます。対象期間は、宿泊日とその翌日までの間に限定されています。


キャンペ
ーンに参画する長野県内の土産物店、飲食店、アクティビティ、体験施設、交通機関等のみでしか利用することができません。


最後に、観光クーポンは、宿泊施設でチェックインの際に付与します。しかし、旅行会社での来店予約の場合には、店舗で付与されますので、実際の運営時における注意が必要です。

気を付けるべき点

1つは、旅行代金によって、助成対象となる旅行の助成前(割引前)の税込価格等が変更となる点があげられます。


長野県の事例では、次の表の通り、10,000円未満か10,000円以上かによって、金額が変更します。また、旅行者一人当たり割引上限が5泊までと設定されています。助成の対象にならないパターンを把握しておかなければなりません。

もう1つは、制度の適用範囲です。GoToトラベル事業及び「信州の宿 県民応援前売割」事業、「安全・安心な修学旅行等サポート事業」との併用はできません。


また、適応される期間です。現在の利用期間は9月30日(金)までです。なお、以前には適応を受けるためには、予約日の制限もございました。以上より、自社ホームページなどにおける発信内容を再検討しなければなりません。


制度が複雑であるゆえに、問合せの多い内容に対し、FAQを掲示しています。随時更新していますので、定期的にご確認されることをお薦めします。https://tabi-susume.com/faq/#tab3

事例.長野県

項目 詳細
タイトル 県民支えあい 信州割SPECIAL 宿泊割
URL https://tabi-susume.com/
対象期間 利用期間は9月30日(金)。予約の制限はありません。
支援内容 新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい環境にある観光産業を応援するため、長野県在住及び近隣県民を対象とした「県民支えあい信州割SPECIAL」事業を実施する。支援内容は、事前に登録された宿泊事業者及び旅行会社にて宿泊旅行代金に応じた割引を実施し、さらに宿泊割の利用者には、対象観光施設で使える観光クーポン2,000円分をセットで提供する。
対象者 現在は、長野県、群馬県、埼玉県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県にお住まいの方(全国が対象ではありません)となっています。 ・割引を行う際は「新型コロナワクチンを3回接種済 又は 検査結果が陰性であること」が条件となります。
プラン特徴 ・1度の宿泊旅行あたり5泊までを上限とする ・1人1泊当たり宿泊旅行代金(税込) 5,000~10,000円未満: 割引金額:2,500円+観光クーポ2,000円  10,000円以上: 割引金額:5,000円+観光クーポ2,000円

事例.徳島県

項目 詳細
タイトル みんなで!とくしま応援割
URL https://www.awanavi.jp/topics/minna-ouen2.html
対象期間 9月30日(金)まで。
支援内容 徳島県及び対象地域に在住の方に限り、各提供施設(県内の登録宿泊施設に宿泊する場合、又は登録旅行会社)にて、宿泊商品・旅行商品(宿泊を伴う旅行商品・日帰り旅行商品)を購入する場合、1人最大7千円/人泊・旅行(宿泊助成・旅行商品助成+周遊クーポン)の助成を行うものです。それぞれの代金の1/2(上限5,000円)の額を助成するとともに、県内の「利用対象施設」で利用できる最大2,000円(人泊・旅行)の「とくしま周遊クーポン」を提供する。
対象者 対象は、徳島県、香川県、高知県、愛媛県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、兵庫県、和歌山県在住者です。 ・原則として宿泊者全員分の在住者の書類が必要(保護者同伴の18歳以下の方は不要) ・「みんなで!とくしま応援割」を利用する場合は、「ワクチン・検査パッケージ」の活用が必須です。「ワクチン・検査パッケージ」とは、ワクチン予防接種済証等またはPCR検査等の陰性証明書の提示ができる状態であり、これによって助成の対象となります。
プラン特徴 ・2021年8月1日以降の宿泊分は回数制限がない。 ・連泊の場合は、申請一回あたり連泊日数は「3連泊」まで ・「とくしまアラート」が「レベル3以上」又は隣県(出発地)の感染レベルが「レベル3」に移行した場合および、まん延防止等重点措置が適用される場合などは、「みんなで!とくしま応援割」を停止となります。

事例.長崎県

項目 詳細
タイトル ふるさとで“心呼吸”の旅キャンペーン
URL https://www.nagasaki-tabinet.com/feature/furusato-sinkokyu
対象期間 9月30日(金)まで。
支援内容 国の旅行需要喚起施策「GoToトラベルキャンペーン」の一時停止により大きな影響を受けている県内観光業界の回復に向けた緊急的な誘客促進対策として、長崎県内の宿泊施設に宿泊する対象地域の県民に対して、4,000円以上(税込)の宿泊代金及び旅行商品(日帰り旅行含む)を対象に、宿泊及び旅行商品代金の50%(最大5,000円/人(泊))を助成し、地域限定クーポン2,000円/人(泊)を付与する。
対象者 長崎県、福岡県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県在住者 ・グループ内に県外の方を含む場合は、対象地域の方のみが助成対象 ・対象地域の県民であることが確認できる公的証明書の提示が必要 ・新型コロナウイルスワクチン3回の接種証明又はPCR検査等の陰性証明が必須
プラン特徴 ・同一施設につき、毎月3泊まで ・利用回数に制限がない

まとめ

この記事では県民割の基本的な概要、Go toトラベルとの比較、事例を紹介させていただきました。観光事業者にとって、国が支援する事業は、短期的な事業継続のための対策になるだけではなく、地元・近隣の固定客に対して魅力を伝える機会として、非常に重要な意味を持っています。この記事を参考に観光事業者が県民割に取り組むメリット・デメリットを理解頂き、上手く活用頂けますと幸いです。最後までご覧頂き誠にありがとうございました。

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